「火の力」
酷暑のあまり、身体と空気の境界線のない夏、
みなさまいかがお過ごしでしたか?
第20回目のコラムは「火の力」
夏の終わりの想い出のお話をお届けします。
久しぶりに富士山麓に戻り、ひと仕事した夜は
「吉田の火祭り」がありました。
日本三奇祭に数えられる大祭で、その歴史は450年にも及びます。
「吉田の火祭り(鎮火祭)は北口本宮冨士浅間神社と諏訪神社の両社のお祭りで、毎年8月26日、27日に行われます。450年以上の歴史を持ち、日本3奇祭、日本10大火祭りにも数えられる富士吉田を代表するお祭りです。」
「元来、火祭は、浅間神社ではなく、諏訪神社の祭礼であり、『甲斐国志(かいこくし)』においては、”上吉田(かみよしだ)村諏訪明神の7月22日の例祭として町中で篝火(かがりび)を焚く”とあり、上吉田の産土神(うぶすながみ)であると記されています。
火祭は諏訪神社の神主である佐藤家を中心とした諏訪神社の祭りでしたが、浅間神社の社司(しゃし)や御師が関わるべき祭りでもあったことを伝えています。
暮れ方に御旅所に奉安(ほうあん)されると、時同じくして、高さ3メートルの筍形に結い上げられた大松明90余本、家毎に井桁(いげた)に積まれた松明(たいまつ)に一斉に点火されると、街中は火の海と化し、祭りは夜遅くまで賑わいます。」-富士吉田市観光サイトより引用
この火祭り、450年間一度も街中で火事が起こった事もなく、無事に毎年終わるのだといいます。
大松明に点火された頃、富士吉田に辿り着いた私。
まず感じる、街中に漂う煙の香りと燃え盛る火の熱さ。
あまりの体感に、こんな凄い事を毎年富士山でしていたのね!と驚きを隠せません。
様々ないわれがあるそうですが、富士山の神様は木花咲耶姫さま。
夫の瓊瓊杵尊に不貞を疑われ、火中で出産し潔白を晴らすという美しいだけではなく真のある女神に相応しい火のお祭り。
「【ほと】には火に関する説話が多く、経水を火にみたてたもので、【火(ほ)】との関係があるのではないかと思われるとの説もある。」
街中を歩き、北口本宮浅間神社まで向かう最中、
圧巻の景色に思わず、凄いなぁと思ったのは
こうした火の祓う力を使って、穢れを祓うことを考えついた昔の人達。
白川静によると、
「【火】が特定の人によって扱われたものであることは、火主を示す【主】が主人、廟中で火を執る【叟】が長老の称であることからも知られる。古代の神事は夜行なわれることが多く【光】はそのような神事のときに多く用いられた。」
そう、火は闇を照らす光でもあるのだ。
「また、昔は火が生活の中心で、アンダマン諸島では、炉は「家族の火」とよばれていた。
家族を、古代ギリシアのように、「炉の旁にあるもの」という意味の語でよぶことは、他地域にも多く、また、中国では、家族を同爨(どうさん)とよび、分家することを分火ともいう。」
火を囲むことがめっきり少なくなった現代において、この祭りがもつ意味はもっと大きなもののように思えてくるのです。
火(夏)は燃えて灰と土を生じる
その土から金が生まれ…と五行で考えても夏の終わりに相応しいお祭り。
すべての罪穢れを祓う壮大なお祭りに
身を正した夜でした。
少し風も涼しくなった今日この頃、
どうか皆さまも、素敵な秋をお過ごしください。
それでは、また来月!
【Information】
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