だから僕は豊岡市に移住した

ー原点に立ち返ってサステナブルな社会をつくる、自然に囲まれて生活する、若い時にしかできないことにチャレンジするー

2019年からフランスにある大学院に通っていました。

専攻は『農業政策と持続可能な国際開発 (Food Politics&Sustainable Development) 』で、現地の生産者さんを訪問するフィールドワークがメインのコースでした。

しかし、コロナの影響でフィールドワークはおろか現地の大学で授業を受けることもできず、結局約2年もの間、当時住んでいた街・リールの家からリモートで授業を受ける日々でした。

当時、「現場を見ることができないまま修士論文を書かなければいけない」という焦りが募っていました。

ちょうど日本の就職活動時期のタイミングも相まって、2020年の冬には翌年の春に帰国するということを決めていました。その時点で、僕のなかでは「内定先のある東京に行く」一択でした。

『ターニングポイント』

ある時、知人から「豊岡市が地域おこし協力隊を募集している」という情報を教えてもらいました。兵庫県豊岡市は僕の生まれ故郷ということもあって、何気なく募集要項を見ていました。

「大都会の東京で仕事をするのか?」

「東京でも、大学院で専攻していた農業や開発についての一次情報をちゃんと収集できるのか?」

「内定先の仕事内容は農業に関わるサステナブルの分野だけれども、肝心の自分の暮らしはサステナブルなのだろうか?」

地域おこし協力隊の案内を見ているうちに、これからの仕事や生活への疑問が次々と湧いてきました。

なにより、東京で忙しく仕事する自分がどうしても想像できませんでした。

加えて、大学院で全くフィールドワークができなかったことやフランスにいながら街でオンライン講義を受けていたこともあり、「自然に囲まれて生活をしてみたい」という強い思いがありました。

日本の田舎で育った僕ではありますが、フランスでは約4年間都会で暮らしていました。都会暮らしも充実していましたが、「長期で住むとなると、やっぱり地方だな〜」という考えは常にもっていました。

また、サステナブルな社会づくりには、地方のコミュニティ間のつながりが欠かせないだろうと感じていました。自然資本がたくさんある日本の地方で、コミュニティを大切にしながらサステナブルな社会を作っていきたいと思うようになりました。

そうした思いから「豊岡市地域おこし協力隊の募集、受けてみよう!」という決断に至りました。

一時一次審査から最終審査までのながれ』

内定をもらっていた会社への返事は保留にして、豊岡市地域おこし協力隊に応募しました。

生まれは豊岡といっても育った地元ではなく、豊岡については知らないことばかりでした。

受かる保証も全くなかったので、応募する際にも不安はありました。

無事書類審査が通ったという連絡を受けてホッとしていた一方で、当時はフランスで授業や論文作成に追われていました。

それらを同時並行ですすめながら、2回ほど豊岡市役所の方とオンラインミーティングをさせて頂きました。次第に、自分のなかで豊岡に住むイメージがすごく湧いてきました。

2021年6月に帰国、8月後半に最終面接がありました。

最終面接は10分のプレゼン、20分の質疑応答。面接会場である市役所の部屋に入ると、そこには5人の面接官がいました。

緊張こそしませんでしたが、「あ〜久しぶりやなこの感覚!」と思わず感じてしまうような、ピリッとした空気に包まれたなかでの面接でした。

プレゼンでは、自分が考えている構想、事業内容、そしてなぜ豊岡市で自分はしたいのか、なぜ中田樹ではないといけないのかについて話しました。最終面接も無事に終わり、その日は実家に帰りました。

実のところ、面接の結果が気になってあまりよく寝れなかったです。

その翌日「東京にいくのかな〜、豊岡にいくのかな〜。どちらにしろ、そうなったらそうなったで頑張ろう!」

そんな思いを巡らせながらソファでゴロゴロしてました。

すると電話が鳴り出しました。大きく深呼吸して、ひと呼吸置いて出たところ…

「中田さん、来月から早速豊岡に来れますか?」

「え? それって、どういうことですか?」

「もし、中田さんの「豊岡に来たい」という思いが変わってなければ、ぜひ中田さんに地域おこし協力隊として来ていただきたいです!」電話越しで市役所の方が仰っていたのです。

そう、豊岡地域おこし協力隊に無事合格することが出来たのです!

冷静を装いつつ「ありがとうございます。行かせていただきます。」

とクールぶった返事をしました。が、嬉しくてがっつりガッツポーズをしていました。

2021年9月、豊岡市役所で委嘱式があり、正式に地域おこし協力隊として移住をすることになりました。

次回に続きます。